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ゲームクリエイターがアニメに挑戦し続ける理由

Keyというブランドを立ち上げ20年が経ちました。
そのアニバーサリーイヤーは、とてもひっそりと過ぎ去ってしまいました。恐らく長年のファンでないと、そんな記念すべき節目であることにも気づいてもらえていなかったのではないでしょうか。その温度感はひしひしと感じていたため、過去の栄光にすがることなく、Keyというブランドは今なお健在であることを示すため、先陣を切って道を切り開かねば、という思いに駆られていました。
そのプロジェクトのひとつが、この企画でした。
パソコンでノベルゲームをプレイする、という文化が廃れつつある今だからこそです。
自分はあくまでもゲームクリエイターであり、餅は餅屋であり、ゲームを作っているべき人間なのは重々承知なのですが、ありがたいことにもう一度チャンスがもらえたので、アニメのプロの中に交じって、新しい時代のKeyを作るべく、2017年から本プロジェクトに取りかかりました。背水の陣です。失敗したら、Keyというブランドが失墜しかねません。でも、挑戦権を得られたのだから、突き進むしかないと思ったのです。

自分は、元々アニメの脚本の勉強や下積み経験のない、ずぶの素人でした。
『神様になった日』も、最初の原稿は上手く書くことができず、ひどい状況でした。周りの意見を聞いても、とても商業作品として通用する出来ではない、という辛辣なものでした。
それでも、可能性のようなものは感じてもらえたのか、「これは面白くなる」と言って良くしようとしてくれる方たちが現れました。
その人たちこそ、監督を筆頭としたアニメスタッフの皆さんです。
熱心に、こうしたほうがいい、ああしたほうがいい、という指摘をもらい、修正を繰り返しました。どうしてこんな素人に熱心に付き合ってくれているのだろう?と疑問に思う日々がありました。それでも叱咤激励してくれる姿に、本気でこの作品を良くしようとしてくれているという真剣さを垣間見、それに懸命に応えようとし続けた2017年から始まった約2年半の年月でした。
鳥羽プロデューサーからは「原点回帰」というキーワードを頂いていました。
自分は『Angel Beats!』や『Charlotte』で、戦闘やバンドや異能力といったエンターテインメントとして放り込める要素はすべて放り込む、というゲーム制作の時とは違うシナリオを書いていました。その「原点回帰」の意味について特に深く話し合ったわけではないのですが、自分なりに『Kanon』や『AIR』の頃のような、ただ純粋に感動できるお話を求められているのだな、と解釈し、脚本を書き上げました。

これが新しい時代のKeyの一歩となることを切に祈っています。

麻枝 准